子どもだけで行動する難民も
アメリカに拠点を置く人権保護団体、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、先月末、インドネシアからオーストラリアに向かっている難民船が沈没した事件を受けて、「オーストラリアとインドネシアの政府は、ただちに難民、とくに子どもたちを守るための指針をつくるべきだ」との声明を発表した。
ヒューマン・ライツ・ウォッチの最新の研究によると、インドネシア国内にはスリランカ、アフガニスタン、ビルマなど各国から亡命してきた子どもの難民が数百人いて、その多くは保護者がおらず、子どもたちだけで生活しているという。
難民たちはみな、難民の定住を認めているオーストラリアに行く目的で、中継地点のインドネシアに入国するが、インドネシアは難民条約に批准していない。インドネシアでは、難民たちは不法入国者として扱われ、収容所へ入れられるケースも多い。子どもの教育の機会、基本的な生活の支援を与えていないため、難民たちは危険を承知で密航船に乗り、オーストラリアへ渡るのだ。
難民審査の結果まで待てない
オーストラリア政府は、難民の受け入れに先立ち、国外で難民の審査を行っている。しかし、そのプロセスには数年の月日を要する。その間、難民たちには生活の保障はない。
あるアフガニスタン出身の難民はヒューマン・ライツ・ウォッチに対してこう語った。「インドネシアに入国してから、8か月から9か月後に、ようやく面会に呼ばれます。結果が出るまでには、数年かかります。でもボートにのってしまえば、36時間、運が良ければ24時間で、オーストラリアに行けて、すぐに審査を受けることができます」。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、オーストラリア政府には、難民審査の手続きの迅速化を、インドネシア政府には、難民たちの法的立場、生活改善をはかるように勧告している。

HUMAN RIGHTS WATCH
http://www.hrw.org/news/2012/09/10/