世界に100誌以上のネットワーク
2003年に日本で創刊された雑誌「ビッグ・イシュー」。ホームレスの人が販売を担当し、売上の約半分が彼らの収入になるというこの雑誌は、もともとイギリスで生まれたものだ。
ビッグ・イシューと同様、ホームレスの人たちを応援するために発行される雑誌や新聞は「ストリートペーパー」とよばれ、現在、世界に100誌以上の媒体がある。
そのひとつがフィリピンの「Jeepney」という雑誌だ。価格は100ペソ(約200円)でそのうち50ペソが、販売者であるホームレスの人の手に入る。
本文32ページのこの雑誌は、記事も写真も一流のジャーナリストたちが手がけており、充実した内容だ。販売者のホームレスのインタビューや貧困層出身の若者がモデルをつとめるファッションページもある。
「安全で合法的な仕事がしたいだけ」
この雑誌が日本のビッグ・イシューとちがうのは、売り場が路上ではなくショッピングモールなどの屋内になっていることだ。
フィリピンの路上では、あちこちで物売りをしている人がいるが、じつはこれは違法行為。何かあったときに販売者が不利にならないよう、理解ある店舗のスペースを借りて販売している。
販売者にとっては、路上で汗とほこりにまみれて働くより、ずっと身体的にも精神的にも負担が軽い魅力的な仕事だ。また、通常であれば門前払いをくらうようなショッピングモールでも、販売のために立ち入りを許されることで、自分という人間が認められたような気持になるという。
販売者のひとり、4人の子どものシングルマザーはこんな言葉を同誌に寄せている。「私のようにどんなにひどい人生を送ってきても、希望を捨てずに生きている人間がいます。手を差しのべてくれる人が現れたなら、力強く前に進むことができます。私たちは安全で合法的な仕事をしたい、それだけなのです」
(編集部 野口和恵)

ビッグ・イシュー日本版
http://www.bigissue.jp/about/index.htmlJeepney
http://www.thejeepney.com/