ニコチンに侵される子どもたち
公共エリアでの喫煙スペースがつぎつぎに縮小され、肩身の狭くなっているスモーカーの皆さんには気の毒だが、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチのサイトで、たばこ農園での児童労働の問題が取り上げられている。
その現場は途上国ではなくアメリカだ。その記事によると、ノースカロライナ州の東部にあるたばこ農園を取材したところ、15歳のある少女は、毎日明け方3時に起き、12時間以上、たばこの花をつむ作業をしていると証言した。その農場では、10代前半の子どもたちがみな同じような条件で働いており、なかには9歳の子もいたという。
子どもたちは、作業をしている間、皮膚からニコチンを吸収している。ある研究によると、湿度の高い日に一日たばこ農園で作業をした場合、たばこ36本分相当のニコチンを吸収してしまうという。身体が未発達の子どもたちは、大人よりもニコチンの影響を受けやすい。心臓が痛い、足が痛い、頭が痛い、鼻がむずむずするといった「緑タバコ病」の症状を訴えている子もいる。
最低賃金が守られていないケースも多い。家族そろってたばこ農園で働いていても、世帯の年収は、平均1万7500ドル以下。これよりもずっと低い例もあるという。
違法行為ではない?
アメリカではこうした条件で働いている子どもたちが10万人単位でいるという。なぜ先進国のアメリカでこのようなことが起きているのか?じつは、たばこ農園の児童労働は多くの場合、合法的なものなのだ。
現行の法律では、小さな農場の場合、最低賃金は示されていない。またほかの業種は就業年齢が14歳以上であるのに対し、農業の場合は12歳以上であれば働くことができる。就学時間以外であれば、労働時間の制限もなく、仕事内容も制限されていない。
このように法の抜け穴を利用した搾取がたばこ農園で行われているが、これまでアメリカ政府は見てみぬふりをしてきた。大統領選挙を控えた今年、候補者の児童労働に対する考えについて注目したい。

ヒューマン・ライツ・ウォッチ
http://www.hrw.org/news/2012/09/05/