届けたいのに届けられない
大規模な災害や紛争に見舞われ、避難を余儀なくされている人たちをテレビで見ると、なんとか食料や生活必需品を届けたいと思うのが人というもの。
しかし、支援物資がそろっていても、そこに届けるまでの道が寸断されていることがしばしばある。1年と9か月前の東北大震災のときにもこれが支援のネックとなった。
緊急食料支援をおもな活動としているWFP(世界食料計画)では、世界各地でこうした試練に挑んでいる。
今年9月上旬、パキスタンで季節風の影響による豪雨によって広い地域が水没し、500万人の人々が避難。食料、医療へのアクセスができない状態になった。
WFP は1万世帯に1か月分の食料を届けるよう必要があると判断。それを届けるためのあらゆる手段を考えたが、トローリートラクターが唯一の手段と思われた。
ドライバーも命がけ
9月26日、8台のトレイラーに28メトリックトンの食料が積まれた。洪水の影響を受けた20㎞の道をどこまで進むことができるか心配されたが、5㎞以上続く狭くぬかるんだ道もうまく切り抜け、わずか6時間で現地に到着することができた。
これをはずみに翌日、別のトラクター32台が同様のルートを通って食料を届けた。この作戦は9日間続き、合計で367台のトラクターが出動した。560トンの食料や日用品を届けることができ、7万人以上の人々に1か月分の必需品が行きわたった。
緊急時の食料支援の場合は、それを届けるドライバーはもちろん、判断をくだす側にとっても勇気と冷静な思考を求められる。経験豊かなスタッフのおかげで、多くの人々が困難な状況を乗り切ることができている。

WFP(世界食料計画)
http://www.wfp.org/stories/